83点
この本の作者は「山田悠介」。
山田悠介といえば、「リアル鬼ごっこ」というつまらない小説を書いた人だ。(ひどい表現になって恐縮だが、この「リアル鬼ごっこ」というのは、腐った童話のような、本当につまらない小説だった)
そのため、この作者の名前を見たときに読むのをやめようかと思った。
しかし、表紙が美しかったのと、宣伝が大きかったことから、読んでみた。
意外だった。
たいへんおもしろかった。込まれた。
読み終えて最初に思ったことは、失礼ながら
「山田悠介も上手になったなあ」
ということ。とても同じ人が書いたとは思えなかった。
次に思ったのは、読ませる力があるなあということ。少し大げさに言えば、むさぼるように読んだ。
それから、美しいなあと思った。それは、文字から浮かび上がる光景や人、それから少しずつちりばめながら、決して嫌味でない伏線。だからこそ、伏線が回収された後もその光がしみじみと感じられる。
これは、「闇に香る嘘」とは違う点だ。「闇に香る嘘」は、伏線を回収した後にこの本のような光るような良さは少なかったと思う。
最後に、構成が古典的だなあと思った。決して悪い意味ではない。現代的な素材を扱いながら、昔からあるしっかりした構成をとったことで、作品自体に安定感を与えたと思う。
映画化されるのではないだろうか。
感想の感想
A:「良かったです。何回も読み返したくなる作品です!」
B:「一気に読了しましたが正直面白いからとかじゃなく文章が薄いからですね。近未来モノ書くなら世界観考えましょうよ。」
→私はAに近い。
Bの見解は正直言ってよくわからない。自分が、近未来モノをあまり読まないということもあるし、世界観というものにそれほどこだわりがないからだろう(よほど矛盾に満ちた世界でなければ、気にならない)。
だからこそ、Bのような意見はぜひもっと聞いてみたい。