本の感想の感想

読書の後の備忘録

「闇に香る嘘」の感想・書評

闇に香る嘘

 

80点

 

 ミステリーでもあり、サスペンスでもあり、家族ドラマでもある。

 第一の印章は、とにかく暖かい小説であること。

 家族や、兄弟、母と子、これらに対する作者の書き方が暖かい。決して幸せばかりではないけれど、そういう中にあって少しずつ、いい家族になっていく。気持ちのいい内容である。

 次に、多くの宝石を詰め込んだような小説であると思った。もしこの中に書かれているコンセプトを取り出して別の小説を作れば、五つぐらい作れるのではないだろうか。そういう、いろいろな要素を盛り込んだ作品だと思った。

 この点は、必ずしもほめるだけというわけにはいかない。

 いろいろと盛り込み、うまく回収している。しかし、それぞれ回収したものが大きいため、全体として何がメインだったのかわかりにくくなっている。

 それが惜しい、と思う。

 とはいえ、腎臓、これが全体を通じるメインだと私は思う。これがあるからこそ、読み終えた後に、気持ちの良い高揚感を持てたのだ。

 

 感想の感想

「盲目と言う設定がより一層の緊張感を演出してくれます」

→その通り!盲目という設定が抵抗なく受け入れられ、興奮が増した。

題名も「闇」「香る」。この題名は本当に素晴らしい。私は読みながら、墨汁の香りが本当に香るような気がした。

 

「上手いとは思うのだが、それが何か物足りなさにも繋がっていると感じるのは、欲張り過ぎだろうか。」

→この感想は私と同じ感想だろう。

「なるほど、たしかにこれは新人離れしている!!」

→おっしゃる通り。私は。新人の作品だとはまるで思わなかった。作者は知らなかったが、きっと名のある作家なのだろうとばかり思っていた。