51点
故郷に縛られた人々の物語。
犯罪がらみの話もあれば、そうでない話も。
小さな作品が複数載っている。
暗い人々、暗い島、暗い内容、そういう中にあって、希望や、幸せのようなものも含まれている。
この作家は、本当に暗い醜い部分を描き出すのがうまい。
そういう作家が、人の明るく希望に満ちた部分を記載したらどうなるか・・・それもなかなかうまい。だが、心に響くというところまではもう一つのようだ。
やはり暗い部分を描いた方が印象に残る。
だが、それも含めて作者の計算かもしれない。
望郷という感情は、基本的に苦く、重く、でも美しかったり、自分の根幹を示していたりもする。
そういうごちゃまぜの、でも少しくらい、そういう感情をこの一冊で示したとすると、それは成功したといえるだろう。
何より思うのは、この作家の、作品の平均値の高さだ。
感想の感想(カギ括弧内はamazonから引用)
「 収録作「海の星」が日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞、選考委員の北村薫氏は、 「鮮やかな逆転がありながら、小説の効果のための意外性のため無理に組み立てられた物語ではない。筋の運びを支える魚料理などの扱いもいい。(中略)――ほとんど名人の技である」と絶賛。
→そういう見方があるのか!という感じ。よく思うのだが、作家が作家を評価するときは、うまさがよくわかるのだろうなあ。
「「告白」を読んで以来、湊かなえさんの作品は読んでいない。何故なら目を背けたいような残酷なシーンは読みたくないので。しかし、こちらの作品がドラマ化された時、非常に感動したので手にしてみた。」
→この方の言うことはよくわかる。私も、湊かなえの作品を読んだ当初は、残酷すぎて、読むに値しないと思ったものだ。
今は、あくまでも小説と割り切りつつ、そのうまさに舌をまいている。