78点
なぜか、人の家に入り込んで謝ったり、手伝ったり、やけに卑屈な男性。いったいなぜなのか・・・過去には何があったのか・・・
こういう内容。
すばらしい。
なぜすばらしいのか、結局人の心を、暖かい心を描いているからだと思う。理解できる内容で、無理のない内容で、ときに虐げられ、ときに誇りを失いそうになり、それでも芯がぶれない心、そういうものを見ると、やっぱりすばらしいといいたくなる。
それだけではない。庭師、この木を扱う魅力がまたすばらしい。
一流と二流三流、この違い、またこころから一流になりたいと願う三流の悲哀、これもまた美しい。
そして、食器と灰皿にまつわる話。これがまた、美しい。日本人としてこの心を持つことを誇りに感じる(もちろん外国人ももっているかもしれないが)。
少し時系列が分かりにくく、読んでいて混乱したが、人に勧めることのできる小説だ。
感想の感想
「主人公となる彼の人生感には頭がさがる思いがしました。」
→わかる。ただ手放しに共感はできない。私には彼の人生観はつらすぎる。ただ、少年の心に、また舞子に、届いたことは喜ばしい。
「 淡々と静かな文体で、でも読み手を離さない展開で、引き込まれた。」
→本当に。読んでいるとも意識しないまま、読んだ。
「久し振りにああ〜すごくいい本に出逢えた〜〜って」
→結局いいものは、みんながいいと思うのかもしれない。
私は暖かい心に触れるのが好きだが、でもそれは一様ではない。作家それぞれが、よしとするものが違う。だから見せてくれる暖かさが違う。本はなかなか嘘をつけない。本のすべてから、読者はその作家を受け取る。その作家の厚さ、あたたかさ、考え方、何をよしとし、何を悪しとしているのか。
だから、本を読むのはやめられない。