90点
私は、この作品をエルキュール・ポアロシリーズの最高傑作と信じている。
この本を読んで、悲しくて悲しくて、そして美しくて暖かくて、泣いた。
まずは悲しい。その悲しさは読めばわかる。
次に美しい。ポアロのヘイティングズへの友情が、である。
ポアロは、いつもヘイスティングズをちょっとバカにしているところがある。それにポアロ自身が自信家である。
でも、ポアロがいかにヘイスティングズを大事に思っているのか、それが分かる。
そのことは暖かさにも通じる。
ポアロは、たぶん、この本の中ですごく怒っていたのだ。
なぜ、怒っていたのか、それは、ヘイスティングズをたぶん世界の中で「だれよりも」大事に想っていたからだ。
そのためにはポアロは自分のポリシーを曲げることもいとわないのだ。
そして、ポリシーを曲げることもいとわないが、しかし、曲げられないポリシーもあるのだ。ゆえに必然の結果を導く。
そんな中にあって、ポアロはヘイスティングズに一つ、心からのお願いをする。
それがまた、泣ける。
ポアロは優秀なのだ、賢いのだ、ヘイスティングズよりもはるかに。
だから、どうあるべきかわかるのだ。
ただ・・・その賢さが導く結論は絶対であったとは、私は思いたくない。それではいよいよ悲しすぎる。
あいまいな記述になってしまったが、内容を語ることはしない。ネタバレはできない。
ぜひ読んでほしい。できればポアロの作品を読んだ後で最後に読んでほしい。
そういう他の作品群が、この作品の魅力を何倍にも高めるから。
文句なしの傑作である。