本の感想の感想

読書の後の備忘録

「わたしを離さないで」の感想・書評

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)

 52点(?)

 

ノーベル賞を受賞したカズオ・イシグロの作品を読んでみようと思い、手に取った。

とある施設の少年たちの話。その様子を見ていくうちに、残酷な事実が浮かび上がっていく。

そういう内容。

話の最初の方は、奇妙な状況ということもあって、引き込まれて読んだ。しかし、徐々によくわからなくなってきた。いろいろなことが混在しているようで、何かに進んでいくという感じが少ないからだ。むしろ、色々なことをごちゃごちゃと書いていくうちに、事実がゆっくりわかっていくという感じだった。

謎が明らかになった後は、あまりおもしろくはなかった。そこに書かれている内容は、読者として予想できるものであり、かつ、何か感銘を受けるようなものでもなかったから。

ただ、この作品を読んだ後で、まだ自分はこの作品のことをよくわかっていないのではないかという気になった。作者や作品のことを分かったような気持になれなかった。機会があれば、他の作品を読んだ後、もう一度じっくり読んで見たいと思った。ノーベル賞作家でもあることだから。

 

感想の感想

「この作品には、色々な読み方があると思うが、私は現代科学批判を伏流水にした特殊な青春の愛の物語と思う」

→この読み方をするならば、私は「現代科学批判」の部分についてはほどほどにリアリティがあると思っただけであり、「青春の愛」という部分については、「現代科学批判」と多くの部分で関連しており、その関連を除くと、他の愛の小説と比べて大きな違いが見出せなかった。

「イシグロカズオさんの小説は独特の不思議な世界観があります。」

→おっしゃる通り。たしかに、この本には、現代社会でもない、未来でもない、童話でもない、不思議な世界を感じる。

→おっしゃる通り。人が自分のコントロールできるものがない状況で生きていくこと(この物語が本当にそうなのかは分からないが)ついて、あるいは愛について、確かに無力感を感じた。

「日本語のキャシーの語り口があまりに丁寧過ぎて、子供に説明するような言い回しというのか、とにかく読みづらく、かったるい。」

→たしか、朝日新聞で、イシグロ氏が意図的にそのように書いたといわれていた気がする。私はそれほど抵抗はなかったが、独特の世界観を作り出す理由の一つになっている気がする。