55点
昔の名著ということと、本の題名に目がとまった。なんとなく読む前から内容が分かるような気はしていたが、それでも読んでみた。
まず、読み始めていると、あまりいいとは思えなかった。たしかにいいことを書いているとは思うし、特に若い人が読むと、大いに啓発されることがあると思う。
一方で、私はこういう内容については、ドストエフスキーとかトルストイでもう十分に感動した経験がある。そのため、それと比べると、かすかに押しつけがましさを感じた。それがどうしても気になった。
小学校の頃の道徳の本でも、一つの価値を押し付けようとする感じが嫌だったことを思い出した。もちろんこの本は、小学校の道徳の教科書よりははるかにいい本だと思うけれど。
本の後半以降になって「自尊心」や「恥」ということを扱っていた。これらについての記載は魅力があった。特に「恥」という気持ちは、個人的に人の根本だと思っているので、それを取り上げたこの本について、少し評価を上げた。
感想の感想
「私は この作品を 敗戦後 まもなく 読めた幸せ者です。」
→この本は80年ほど前に書かれたそうなのだが、そのことは興味深い。
敗戦後の時代に、この本のような思想を持っていた人がいたこと自体は不思議ではないが、当時も、こういう本を書く必要があったということなのだろうか。つまり当時も、道徳的に荒廃していたということなのだろうか?
「この書物に展開されているのは、人生いかに生くべきか、という倫理だけではなくて、社会科学的認識とは何かという問題であり、・・・」
→この点はおっしゃるとおりだと思う。社会学と人生哲学をともに語っている点については、学ぶところが大きかった。