本の感想の感想

読書の後の備忘録

(屍人荘の殺人)の感想・書評

 58点

 

3冠達成という宣伝を見て読んでみたが、まあまあである。

いいところは本格ミステリーの雰囲気があるところだ。

枠組みを構築して、その枠組みの中で、いろいろな仮説を立てる。

そして、その仮説を一つ一つ検証して、最終的に意外性もある結論を導く。

そういうところが本格的だと思う。

 

一方、私から見て魅力を薄れさせたと感じるのは、ゾンビを出したところだ。

バイオハザードのような話と、本格ミステリーの雰囲気がどうしても違和感があった。

違和感を感じるのは、話の流れのせいでもある。一部では誰でもゾンビ化するおどろおどろしさがあり、一部では冷静なミステリーが進行する。この二つはなかなか両立しにくいところだ。

閉じ込められた人々の物語では

インシテミル

という小説があった。

あの小説も、最後はやや無理な感じは受けたものの、危険・過酷な状況と推理が何とか両立した話として覚えている。

 

この本は最初に著者が、本を書くに至った経緯を記載している。

それを読むと、正直で率直な性格が伝わってくる。

初めてゆえに、いろいろなものを盛り込んで、少しまとまりが見えにくくなった感はあるが、一方では、これで初めてなのかと驚きもする。

次は、ゾンビなしで、ミステリーの雰囲気のみで書いてみてほしいと思う。

 

感想の感想(カギカッコ内はamazonから引用)

本格ミステリとしては斬新なクローズドサークルも良いし、トリックも秀逸。パニックホラーの緊迫感と、探偵と主人公の関係性のおかげで先が気になり、ほぼ一気読み。次作がとても楽しみな作家だ。」

→3冠達成の理由は、このような見方に依るのだろう。ほめすぎという気もちょっとするが・・・ 

「パニックホラー+本格ミステリという着想がすべての作品。
キツイことをいえば、パニックホラーとしても本格ミステリとしても、まるで薄味。
要は、合わせ技に頼っただけ。
とはいえ、この合わせ技が見事なのも確かだ。
タイトルに一発芸と書いたが、これが連発できるかどうか、次回作が勝負。」

 →この組み合わせがいいともいえるが・・・無理ともいえる・・・

それにしてもあたたかいコメントだ。評価しつつ、批判しつつ、次回を期待して応援している。

屍人荘の殺人