本の感想の感想

読書の後の備忘録

「リバース」の感想・書評

65点

 

湊かなえを最初に読んだのは、「告白」だったと思う。爆弾がらみの、暗い暗い小説だった。

思わず引き込まれるような気もして、しかし、それほどでもないような気もして・・・何とも言えなかった。

ただ

「グロテスク」

という印象も強かった。

こんなくらい、陰湿な人を、いったいどんな人が書けるんだろう、そんなことを思った。

周囲では、「湊かなえ」はおもしろい、という人が多かった。

 

さて、この作品だが、途中まで、ちょっと湊かなえは作風を変えたのか、と思った。

全体に、少し暖かめな空気が漂っていた。

その一方で、何とも言えない気持ちの悪さ、落ち着かない感じも漂っていた。

終わりに進むにつれ、

「悪くはないが、それほどでもない」

という感想が強くなってきた。

それと

「でもこの作家は、こういう作品でも自分の空気を作り出せるんだよなあ、すごいよなあ」

とか

「作品には名作もあれば駄作もあるけど、この作品も駄作というほどではないよなあ」

とか思いながら、読んでいた。

しかし読み終えた後は、

「この作家、すごいなあ」

という感嘆に変わった。

極めて鮮やかなのだ。

自然で、自然で、そして最後に、すべてが単にちりばめられていたわけではないことが分かる。

何もかも。

最後まで読んで、この作品がようやく統一感をもって、一つの作品として理解できた。

駄作なんてとんでもない。

すばらしい技術である。

(多少、構成に無理なところがあるのでないか、とも思うけれど)

 

内容を話すのはネタバレになるので、それはやめておく。

わずかにいえば、

題名であるリバースには二つの意味があるはず。

巻き戻しと・・・。

 

感想の感想(カギ括弧内はamazonから引用)

 「湊かなえさんの原作をはじめて読みました。あっというま、一瞬に起こる結末がすごい。裏技の域です。読後にやってくる余韻。」

→余韻、そう、それがある。体が震えるでもない、寒気がするのでもない、何とも言えない余韻、読者に唯の明るい感動を与えようとはしない作者、そのポリシーに脱帽。

「改めて作家の力量を思い知らされました。一気読みです。ロマンスの香りも豊かに展開する筋立ては、テンポも軽快です。」

→作家の力量、全くその通り。(ただの思い付きだが)私が思うところでは、作家の力量は、作品を全体を通して構成する力と、読者がいかに受け取るか、いかに読むかということを見切る力によるのではないだろうか。

「まず人物が薄っぺらい。
何でも周りのせいにして卑屈になる主人公に感情移入できないし、恋に落ちていく心情も恋人を失った喪失感も全く伝わってこない。」

→薄いとは思わなかったけれど、感情移入できないという点は同じ。ただ、違和感を持つほどではなく、自分はあまりよくわからないけれど、十分理解できるな、という感じだった。

リバース (講談社文庫)